大判例

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東京高等裁判所 昭和27年(う)4612号 判決

被告人 桑原善策

〔抄 録〕

弁護人の論旨に対し

凡そ横領罪の成立に必要な横領行為は、常に必ずしも犯人が目的物件に対し費消するとかその他何らかの処分行為をすることを要すると解すべきものではなく、犯人が他人の物について不正に領得する意思を持つており、且つ、その意志があるものと認められる外形的な動作がされたことを以つて足るものと解するのが相当であつて、本件のように他人から集金を依頼されたものが集金した金を事後依頼された他人のために所持するのではなく、これを勝手に自己のものとする意思で所持する場合においては、その行為に引続いて後日これを自己の用途に費消した事実があつたとしても、右費消の時点において始めて横領罪が成立すると解するを要するものではなく、当初自己のものとする意思で所持し始めたその時点において横領罪の成立を認定しても少しも妨げないものである。而して横領罪は右に述べたようにその犯意がその外形的行為に表現せられた時に成立完成するのであつて既遂又は未遂を区別する余地はないものである。ところで原判示犯罪事実は、原判決挙示の証拠によつてこれを認定するに十分であつて、記録を精査しても原判決には何ら事実認定に過誤あるを認められない。而して原判示によれば、被告人は、原判示組合から所属組合員について組合賦課金や資材売掛代金の集金を頼まれて原判示組合員の住居に赴いてそれぞれ右組合のため集金した原判示金員をいずれもその場所で勝手に自己の用途に当てるため着服したというのであるから、前段で説明したとおり被告人のこの所為は正しく横領罪を構成するものである。従つて原審が右事実をもつて横領罪に問擬したのは洵に相当であつて些かの違法もない。所論は要するに横領罪の成立には常に目的物件の処分行為を必要とするとの独自の見解を前提として原判決の理由のくいちがいを主張するものであつて、これを採用するに由なく論旨は理由がない。

註 本件は量刑不当を理由として職権で破棄。

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